支援の背景・きっかけ
同社では、長年にわたりExcelやGoogleスプレッドシートを業務の基盤として活用してきました。しかし、業務が拡大するにつれてシートの数は膨れ上がり、「社内で一番重要なファイルが、いつの間にか10個以上存在している」という状況に陥っていました。どのファイルが最新版なのか分からず、担当者しか扱えない"ブラックボックス化したシート"が各部門に点在していたのです。
加えて、業務効率化を目的に導入したSaaSツールも10種類以上に達していましたが、現場で実際に活用されているものはごく一部でした。機能の重複や契約の見直しがなされないまま、コストだけが積み上がっている状態です。IT専任の人材も不在のため、「どの業務が非効率なのか」「どこにAIを活用できるのか」といった判断を下せる人がおらず、改善の糸口をつかめずにいました。
そうした中、「業務設計からツール選定、AI導入までを一貫して伴走してくれるパートナーが必要だ」と考えた経営陣が、BWH総合研究所にご相談くださったことが支援のきっかけとなりました。
課題のポイント
・スプレッドシートが乱立し、最新情報の所在が不明確
・SaaSツールが10種類以上あるが、活用されていないものが多く費用対効果が不透明
・業務ナレッジが属人化しており、引き継ぎや情報共有が困難
・IT/DX人材が不在で、改善の方針が立てられない
支援のアプローチ
BWH総合研究所では、「まず現状を正しく把握し、段階的に整理・再構築する」ことを基本方針としました。いきなり全社的な変革を進めるのではなく、特定部署でのPoC(概念実証)を起点に、現場の実感を伴いながら全社展開へとつなげる設計を行いました。
Month 1-2:業務ヒアリングと現状の可視化
支援の最初のフェーズでは、弊社のコンサルタントが各部門を回り、実際の業務プロセスを丁寧にヒアリングしました。スプレッドシートの利用状況、SaaSの契約・活用実態、情報管理のフローを一つひとつ洗い出し、業務全体の地図を描くことに注力しました。
この過程で明らかになったのは、同じ情報が複数のシートに重複して管理されていたり、特定の担当者にしか運用方法が分からないツールが複数存在していたりする実態です。「誰が・何のために・どのツールを使っているのか」を初めて全社的に可視化したことで、経営陣からは「想像以上に整理されていなかった」との声が上がりました。
Month 2-3:ツールの仕分けと業務基盤の再構築
可視化した情報をもとに、各業務に本当に必要なツールを見極める仕分け作業を実施しました。具体的には、活用されていないSaaSの契約停止、機能が重複するツールの統合、そしてスプレッドシートの再設計を行いました。
特に見積もりや請求管理といった基幹業務については、複雑なシートを廃止し、簡潔なフォームと自動計算機能を備えた仕組みへと再構築しました。「誰でも迷わず使える」を設計思想に据え、属人的なスキルに依存しない業務基盤を整えました。SaaSについても全ツールを棚卸しし、「統合できるもの」「リプレイスすべきもの」「本当に必要なもの」を分類。社内リテラシーに合わせた運用設計とともに、最適なツール構成を提案しました。
Month 4-5:AIツールの開発導入と全社展開
業務基盤の整備と並行して、過去事例の検索に特化したLLM(大規模言語モデル)ベースのチャット型AIツールを自社開発しました。社内の対応履歴や議事録などをAIが横断的に検索し、類似ケースや参考対応を即座に提示できる仕組みです。これにより、「あの案件、前にどう対応したっけ?」と人に聞かなければ進められなかった業務が、AIへの問いかけで解決できるようになりました。
全社展開にあたっては、まず特定部署でのPoC運用からスタートしました。現場のメンバーが「これは使える」と実感してから段階的に拡張する方式を採ったことで、導入時の心理的なハードルを下げ、スムーズな全社展開を実現しました。また、ツール開発だけで終わらせず、社員向けの操作研修や活用促進のフォローアップも一貫して実施し、AIが社内に定着するまで伴走しました。
支援の成果
- SaaSの契約数を10種類以上から6種類に集約し、年間のツールコストを約35%削減
- スプレッドシートの重複ファイルを整理し、管理対象のシート数を約60%削減
- AIチャットツールの導入により、過去事例の検索にかかる時間を平均70%短縮
- 見積もり・請求管理業務の処理時間を1件あたり約40%短縮
- 「業務のどこに何があるか」が全社員に可視化され、情報の属人化が大幅に解消された
- 業務設計からAI定着まで一貫した伴走支援により、社内に"AIを活用する文化"が根付いた
- PoC起点の段階的導入により、現場の抵抗感なく全社展開を実現できた
- 担当者不在時にも業務が止まらない体制が構築され、引き継ぎの負荷が軽減された