福井の製造業の生成AI活用|繊維・電子部品・眼鏡の業務別の使いどころ(2026年版)

結論福井の製造業で生成AIを使うなら、機械や工程に直接つなぐ前に、見積・図面の読み合わせ・検査記録・取引先とのやり取りといった、製造のまわりにある書類仕事から始めるのが手堅い道です。もう1つの入り口は、ベテランの技能を手順書にする仕事です。国の白書では、技能継承のために高年齢の従業員に継続勤務をしてもらっている企業が最も多く(54.8%)、技能の見える化に取り組んでいる企業は従業員49人以下で25.9%にとどまります。生成AIは、聞き取った言葉を手順書の形に起こす作業を引き受けられます。
この記事の要点
- 福井の製造業は、事業所数と従業者数では繊維工業が最多、出荷額では電子部品・デバイス・電子回路が最多。眼鏡を主な品目に含む「その他の製造業」は事業所数で2番目
- 入り口は、製造のまわりの書類仕事(見積・図面・検査記録・取引先対応)と、技能の引き継ぎ
- 生成AIに任せるのは下書きと要点の抜き出しまで。数字・寸法・規格は人が元の資料で確かめる
- 取引先から預かった図面や仕様書を、無料版のAIに入れない。入れてよい情報の決め方は社内ルールの記事に
福井の製造業の構造:繊維が最多、出荷額は電子部品、眼鏡は事業所数で2番目
福井県の製造業は、2024年の調査で事業所2,553、従業者7万5,549人、製造品出荷額等2兆6,497億円です(福井県「令和6年経済構造実態調査(製造業)」。事業所数と従業者数は2024年6月1日現在、出荷額等は2023年の1年間)。
業種ごとに見ると、次の3つが目立ちます。
| 業種 | 事業所数 | 従業者数 | 製造品出荷額等 |
|---|---|---|---|
| 繊維工業 | 612(構成比24.0%、最多。割合は全国1位) | 1万4,460人(19.1%、最多。割合は全国1位) | 2,440億円(9.2%。割合は全国1位) |
| 電子部品・デバイス・電子回路製造業 | 59(2.3%) | 1万1,780人(15.6%、2番目) | 3,792億円(14.3%、最多) |
| その他の製造業(主な品目は眼鏡、漆器) | 315(12.3%、2番目) | 5,501人(7.3%) | 805億円(3.0%) |
福井県の製造業に占める割合(2024年調査・3業種を抜き出したもの)
同じ「製造業」でも、形がかなり違います。繊維は、事業所が多く1社あたりの規模が小さい。電子部品は、事業所は59と少ないのに出荷額は最多で、1社あたりの規模が大きい。眼鏡は、事業所の数で繊維に次ぎます。総務省のサイトでは、鯖江市を「眼鏡フレームの国内生産シェア9割以上を誇る国内随一の産地」と紹介しています。
繊維は長く縮んできた業種でもあります。県の資料では、福井の繊維工業(従業者4人以上の事業所)は、2011年の676事業所から2020年の488事業所に減っています(調査の方法が年によって違うので、単純には比べられないと県は注記しています)。
国の白書が示す課題:技能を教える人と時間が足りない
「2026年版ものづくり白書」(経済産業省・厚生労働省・文部科学省、2026年5月)は、製造業の人の問題を次のように示しています。
- 製造業の就業者数は、2024年の1,046万人から2025年は1,033万人へわずかに減少
- 製造業で人材育成に問題があると答えた事業所のうち、6割以上が「指導する人材が不足している」(62.8%)。「人材育成を行う時間がない」は45.4%
- 技能継承のために取り組んでいることは、「再雇用や勤務延長などにより高年齢の従業員に継続して勤務してもらう」が最も多く54.8%。「継承すべき技能の見える化(テキスト化・マニュアル化・デジタル化)を図る」は全体で31.2%、従業員49人以下では25.9%
- AI・デジタル技術の活用にあたっての課題は、「知識やノウハウの取得」(57.2%)と「導入に必要な人材の確保」(47.9%)が上位
つまり、教える人も、教える時間も足りない。そして、技能を文字や手順書にしている会社は、小さな会社ほど少ない。ここが、福井の製造業で生成AIがいちばん役に立つ場所です。これは私たちの見方です。
業務別の使いどころ:任せるのは下書きまで
生成AIが得意なのは、文書・音声の要約や翻訳、文書やレポートの作成、情報の検索・収集・分析です(IPA「DX動向2026」で、AIの使い道の上位はこの3つ。詳しくは「福井の中小企業のAI活用ガイド2026」)。製造業の仕事に当てはめると、次の表になります。
| 業務 | いまの手間 | 生成AIに任せる部分 | 人が確かめること |
|---|---|---|---|
| 見積・注文の突合 | 取引先ごとに様式が違う引き合いを読み、過去の見積を探して数字を組む。届いた注文書を自社の見積と突き合わせる | 引き合いのメールや仕様書から、品名・数量・納期・特記事項を抜き出して一覧にする。注文書と見積書の品番・数量・単価の食い違いを指摘させる | 単価・工数・納期。数字はすべて人が入れ直す |
| 図面・仕様書の読み合わせ | 図面の注記や仕様書の文章を読み、社内の工程に落とす | 注記や仕様書の文章を、工程ごとの確認項目に並べ替える。見落としやすい条件(材質・表面処理・公差の指示)を箇条書きにする | 寸法・公差・規格の値。図面そのものの判断はしない |
| 検査成績書・不良の報告 | 測定値を検査成績書に転記し、取引先の様式に合わせて作り直す。不良が出たときは是正の報告書を書く | 測定のメモや口頭の説明から、検査成績書と是正報告書の様式に沿った下書きを作る。過去の不良の報告から似た事象を探す | 測定値、合否の判定、原因の判断、対策の内容 |
| 技能の引き継ぎ | ベテランの手順が頭の中にあり、手順書が無い | 作業を見ながら録った音声や聞き取りのメモから、手順書の下書きを起こす。「なぜそうするか」を質問の形で返し、聞き漏らしを減らす | 手順の正しさ。ベテラン本人と現場で読み合わせる |
| 取引先対応 | 問い合わせ・納期の回答・英語のメール | 返信の下書き。英語や中国語のメールの要点の読み取りと、返信の案 | 約束する内容(納期・価格・仕様)。送る前に必ず人が読む |
| 会議・朝礼 | 決まったことと宿題が、人によって記憶が違う | 録音から、決定事項と宿題の一覧を作る | 決定の内容と担当者 |
共通する線引きは1つです。数字と約束は人が入れる。生成AIが出した寸法・単価・納期は、そのまま使いません。見積と取引先対応は、送る前に人が読む手順を決めておきます。

繊維・電子部品・眼鏡で、入り口が違う
業種で、最初に効く場所は違います。
繊維では、品番・色・規格・加工の指示が多く、取引先ごとに書き方が違う仕事ほど、読み替えと書き写しに時間がかかります。引き合いや加工指示から要点を抜き出して社内の様式に写す作業が、最初の入り口です。事業所の数が多く1社あたりが小さい業種なので、専任の担当を置かずに、事務の人が1つの業務で試す形が向いています。
電子部品では、検査記録と不良の報告、それに仕様書や取引先の文書の読み取りが入り口になります。1事業所あたりの従業者が多い業種なので、社内ルールを先に作り、入れてよい情報の範囲を決めてから広げるほうが、後で揉めません。
眼鏡では、工程ごとに外注先とやり取りする会社なら外注先への指示書と納期の確認が、自社の製品を直接売る会社なら商品の説明文や海外の取引先とのメールが入り口です。ベテランの手作業の技能を手順書にする仕事も、この業種で入り口になります。
図面と取引先の情報は、入れる前に線を引く
図面は預かりものです。製造業で特に注意が要るのは、取引先から預かった図面・仕様書・価格です。取引先との秘密保持の取り決めがある情報は、会社として認めたサービス(入力が学習に使われない設定や契約のもの)であっても、入れてよいかを先に決めておきます。無料版のサービスに図面を入れない、というところから始めてください。
図面・仕様書・取引先の価格を「入れない」「条件つきで入れてよい」「入れてよい」の3つの区分に振り分けておくと、現場で迷いません。区分の決め方と文面の型は「生成AIの社内ルールの作り方」にあるので、図面と仕様書の行を自社の取引条件に合わせて書き足してください。
始め方:1つの業務で時間を測る
進め方は、福井の会社全般と同じです。業務を書き出す。1つ選ぶ。使う前と後の時間を測る。決まりを作ってから広げる。4つの段階の中身は「福井の中小企業のAI活用ガイド2026」に、無料の相談窓口と補助金の一覧も同じ記事にあります。ツールの導入費に国の補助金を使うなら、「デジタル化・AI導入補助金2026の使い方」も読んでください(締切は2026年10月30日)。
製造業で付け加えたい点が1つあります。最初の1つは現場の人に選んでもらう。事務所で決めた業務より、現場で「これが面倒だ」と言われている仕事のほうが、効果が見えたときに次に広がります。
AI よろづやの「AXのみぎ腕」は、福井の会社の中に入って、業務の棚卸しから、最初の1つを試し、社内ルールを作り、手順書づくりを社内に根づかせるところまでを一緒に進めるサービスです。
まとめ
- 福井の製造業は、事業所数と従業者数では繊維工業が最多(全国1位の割合)、出荷額では電子部品・デバイス・電子回路が最多。眼鏡を主な品目に含む「その他の製造業」は事業所数で2番目(福井県「令和6年経済構造実態調査」)
- 国の白書では、製造業で人材育成に問題があると答えた事業所のうち6割以上が「指導する人材が不足している」と答え、技能の見える化に取り組む企業は従業員49人以下で25.9%
- 入り口は、見積・図面の読み合わせ・検査記録・取引先対応の下書きと、ベテランの技能を手順書にする仕事。数字と約束は人が入れる
- 取引先から預かった図面や仕様書は、入れる前に会社として線を引く。無料版のサービスには入れない
よくある質問
生成AIで図面を読ませて、加工のプログラムまで作れますか?
この記事で扱っているのは、図面の注記や仕様書の文章を確認項目に並べ替えるところまでです。寸法・公差・加工の判断は人が行い、生成AIの出した値をそのまま使わない前提で書いています。
小さな繊維の会社でも、専任の担当がいないと無理ですか?
専任は要りません。事務の人が、取引先の書類の書き写しなど1つの業務で試し、使う前と後の時間を測るところから始められます。国の白書でも、従業員49人以下の企業は技能の見える化が25.9%にとどまっており、小さな会社ほど手を付けていない段階です。
福井県だけの、製造業の生成AI活用の割合はありますか?
2026年10月時点で、県や支援機関の公表資料には見当たりませんでした。全国の数字は、IPA「DX動向2026」と「2026年版ものづくり白書」を参考にしています。
出典
- 福井県「令和6年経済構造実態調査(製造業事業所調査)結果の概要」(2024年6月1日現在・出荷額等は2023年)
- 福井県「令和6年経済構造実態調査(製造業)」
- 福井県「福井県繊維産業の推移と全国比較(2011年〜2020年)」
- 経済産業省・厚生労働省・文部科学省「2026年版ものづくり白書 概要」(令和8年5月)
- 経済産業省「2026年版ものづくり白書」
- 総務省「おためしサテライトオフィス 取組団体の紹介「福井県鯖江市」」
- IPA「DX動向2026」の公表資料(2026年7月16日)
監修:静木銀蔵(合同会社BWH総合研究所 代表)
About
AI よろづやについて
AI よろづやは、福井の会社のAI活用を、共に前に進めるサービスです。研修も、制作も、現場の推進も、地元でまとめて引き受けます。運営は合同会社BWH総合研究所です。
ご相談は無料です。自社の業務のどこにAIが使えるか、どのサービスが合うかから一緒に考えます。