生成AIの社内ルールの作り方|福井の中小企業向けひな形つき(2026年版)

結論生成AIの社内ルールは、最初から分厚い規程を作るより、A4で1〜2枚の短いルールから始めるのが現実的です。決めるのは、使ってよいサービス、入れてはいけない情報、結果をだれが確かめるか、社外に出す前の確認、困ったときの相談先と見直しの時期の5つです。AI事業者ガイドラインも、取り組みはリスクの大きさや会社の資源に配慮しながら、自主的に進めることが大切だとしています。
この記事の要点
- 社内ルールはA4で1〜2枚から。分厚い規程より、全員が読んで守れる長さを優先する
- 決めるのは5つ:使ってよいサービス/入れない情報/結果の確認/社外に出す前の確認/相談先と見直し
- 土台にするのは国の資料。個人情報は個人情報保護委員会、著作権は文化庁の資料で確かめる
- この記事のひな形を、自社の仕事に合わせて直して使える
なぜ社内ルールが要るのか
社内ルールが無いまま使い始めると、社員がそれぞれ思い思いのサービスに、思い思いの情報を入れることになります。困るのは、あとから「何を入れたか」を確かめられないことです。
国の資料も、利用する会社の側で気をつける点を挙げています。
- 個人情報保護委員会は、生成AIに個人情報を入れるときは、利用目的の範囲内かを十分に確かめるよう呼びかけています。本人の同意なく個人データを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合は、個人情報保護法に違反する可能性があるとしています(2023年6月の注意喚起)
- 文化庁は、業務で生成AIを使う事業者に、著作権の侵害を生じさせないよう、社内ルールづくりなどの予防措置を講じることが望ましいとしています(2024年7月のチェックリスト&ガイダンス)
- 総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」は、AIを業務で使う事業者を「AI利用者」と呼び、機密情報や個人情報を不適切に入力しないよう注意を払うことなどを挙げています(第1.2版、2026年3月)
決める5つのこと
生成AIの社内ルールで決める5つのこと
5つの中でいちばん大事なのは、2の「入れてはいけない情報」です。ここが決まっていれば、情報の持ち出しに関わる事故は防ぎやすくなります。
入れてはいけない情報の決め方
情報を一つずつ判断していると、社員は迷います。区分で決めておくと迷いにくくなります。たとえば、次の3つに分けます。
| 区分 | 例 | 扱い |
|---|---|---|
| 入れない | 個人情報(顧客・社員の名前と連絡先など)、取引先から預かった図面や資料、未公表の価格や契約の条件、人事の情報 | どのサービスにも入れない |
| 条件つきで入れてよい | 社内の手順書、社内向けの資料、未公表の企画のたたき台 | 会社が認めたサービス(入力が学習に使われない設定)でだけ入れる |
| 入れてよい | 公開済みの自社のホームページや会社案内、一般的な質問 | どのサービスでも入れてよい |
福井県も、県の職員向けの「福井県生成AI利用ガイドライン」(Ver.3.0、2026年4月)で、入力が学習に使われない等のサービスを使うことを定めています。そのうえで、そうしたサービスであっても、個人情報・人事情報や、政策検討資料・入札資料など公表を前提としない情報は入れないとしています。入力が記録として一時保存される場合があるためです。県の基準は、上の表の「条件つきで入れてよい」よりも厳しい決め方です。県の職員向けの決まりですが、情報を区分で分けて決めるやり方は参考になります。会社のルールで県より緩めるなら、どこまで入れてよいかを会社として判断して決めてください。
社外に出す前の確認(著作権)
生成AIで作った文章や画像を、ホームページやチラシなど社外に出すときは、著作権に気をつけます。文化庁の資料は、次のことを挙げています。
- 著作権の侵害になるかどうかは、既存の著作物との「類似性」と「依拠性」の両方で判断される
- 社外に出す前に、既存の著作物と似ていないかを、ネット検索(文章検索・画像検索)などで確かめる
- 既存の著作物そのものや、作品の題名・キャラクターの名前を指示に入れると、依拠性が認められやすくなると考えられる
- 依拠していないことを説明できるよう、使った指示(プロンプト)など、作った過程を確かめられるようにしておく
ここは注意が要ります。文化庁の資料自身が、挙げた対策をすべて行えば責任を問われないわけではない、と断っています。迷う使い方をするときは、社外に出す前に専門家に相談してください。
そのまま直して使える社内ルールのひな形
次のひな形は、上の5つのことを、短い社内ルールの形にまとめたものです。【 】の部分を自社に合わせて書き換えて使ってください。
生成AI利用ルール(ひな形)
- 目的 このルールは、【会社名】の社員が生成AIを業務で安全に使い、仕事の時間を減らすために定める。
- 使ってよいサービス 業務で使ってよいのは、【サービス名】(会社が契約し、入力が学習に使われない設定にしたもの)だけとする。それ以外のサービスを業務で使いたいときは、【担当者】に相談する。
- 入れてはいけない情報 個人情報、取引先から預かった資料、未公表の価格や契約の条件、人事の情報は、どのサービスにも入力しない。社内の手順書など社内向けの情報は、第2項のサービスに限って入力してよい。
- 結果の確認 生成AIの答えは下書きとして扱う。数字・固有名詞・事実は、使う人が元の資料で確かめてから使う。
- 社外に出すとき 生成AIで作った文章や画像をホームページ・チラシ・提案書などで社外に出すときは、既存の著作物と似ていないかを確かめ、【確認する人】の確認を受ける。使った指示(プロンプト)は【保存先】に残す。
- 困ったとき 間違った情報を入れてしまったとき、似た作品を出してしまったおそれがあるときは、すぐに【担当者】に知らせる。
- 見直し このルールは【3か月】ごとに見直す。最初の見直しは【年月日】に行う。
このひな形は、国の資料の要点をもとに AI よろづや が作った例です。法律上の判断を示すものではありません。
ひな形を作ったら、社員を集めて10分でよいので説明することをおすすめします。紙を配るだけでは、読まれないまま終わりがちです。より詳しい型が必要な場合は、日本ディープラーニング協会(JDLA)が公開している「生成AIの利用ガイドライン」のひな形(第1.1版、2023年10月)も、自社の目的に合わせて手を加えて使う前提で公開されています。
ルールを作って根づかせる段取り
社内ルールを作って根づかせる段取り
最初に今の使い方を聞くのが近道です。 禁止から入るより、社員がすでにどう使っているかを知ってから決めたほうが、守られやすいルールになります。
参考にできる資料
| 資料 | 出しているところ | 使いどころ |
|---|---|---|
| AI事業者ガイドライン(第1.2版、2026年3月) | 総務省・経済産業省 | 会社として守ることの全体像。AIを使う事業者向けの部分と、チェックリストがある |
| 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等(2023年6月) | 個人情報保護委員会 | 個人情報を入れるときの注意 |
| AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス(2024年7月) | 文化庁 | 社外に出すときの著作権の確かめ方 |
| 生成AIおよびAIエージェントを安全に活用するための手引書(2026年7月) | IPA 産業サイバーセキュリティセンターの人材育成プログラムの成果物(IPAの公式見解ではない) | セキュリティ担当者向けの詳しい手引き |
| 生成AIの利用ガイドライン(ひな形、第1.1版、2023年10月) | 日本ディープラーニング協会 | より詳しい社内ルールの型 |
| 福井県生成AI利用ガイドライン(Ver.3.0、2026年4月) | 福井県(県の職員向け) | 自治体が実際に使っている決まりの例 |
福井で、自社の場合はどう決めればよいかを相談したいときは、ふくいDXオープンラボの「IT無料相談」(0776-67-7404)や、ふくい産業支援センターの総合相談窓口(直通 0776-67-7421)を使えます。福井の会社のAI活用の全体像は、「福井の中小企業のAI活用ガイド2026」にまとめています。
AI よろづやの「AXのみぎ腕」は、業務の棚卸しから、社内ルールづくり、使い方を社内に根づかせるところまでを、会社の中に入って一緒に進めるサービスです。
まとめ
- 生成AIの社内ルールは、A4で1〜2枚の短いルールから始める
- 決めるのは、使ってよいサービス/入れない情報/結果の確認/社外に出す前の確認/相談先と見直し、の5つ
- 入れない情報は区分で決める。この記事のひな形では、個人情報と取引先から預かった資料はどのサービスにも入れないことにしている
- 社外に出すときは、既存の著作物と似ていないかを確かめ、使った指示を残す。迷ったら専門家に相談する
よくある質問
無料の生成AIサービスを業務で使ってもよいですか?
入力した情報がサービスの改善(学習)に使われる設定のことがあるので、会社として使うなら、利用規約と設定を確かめてから決めてください。この記事のひな形では、個人情報や取引先の資料はどのサービスにも入れないことにしています。個人情報を入れる場合の条件は個人情報保護委員会の注意喚起を、取引先の資料は取引先との秘密保持の取り決めを確かめたうえで、会社として決めてください。
ルールは社員に守ってもらえますか?
紙を配るだけでは読まれないことが多いので、短い説明会を開き、困ったときの相談先をはっきりさせておくのが効果的です。3か月ほどで見直し、使い方に合わせて直していきます。
AIで作った文章や画像の著作権はどうなりますか?
生成物の扱いは、使い方や作り方によって判断が分かれます。社外に出すときは、既存の著作物と似ていないかを確かめ、迷う場合は専門家に相談してください。文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」に考え方がまとまっています。
出典
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)概要」(令和8年3月31日)
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日)
- 文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)
- 文化庁「AIと著作権」
- IPA 産業サイバーセキュリティセンター 中核人材育成プログラム成果物「生成AIおよびAIエージェントを安全に活用するための手引書」(2026年7月)
- 日本ディープラーニング協会「生成AIの利用ガイドライン」(第1.1版、2023年10月)
- 福井県「福井県生成AI利用ガイドライン Ver.3.0」(令和8年4月)
- ふくい産業支援センター「総合相談窓口」
- ふくいDXオープンラボ「IT無料相談」
監修:静木銀蔵(合同会社BWH総合研究所 代表)
About
AI よろづやについて
AI よろづやは、福井の会社のAI活用を、共に前に進めるサービスです。研修も、制作も、現場の推進も、地元でまとめて引き受けます。運営は合同会社BWH総合研究所です。
ご相談は無料です。自社の業務のどこにAIが使えるか、どのサービスが合うかから一緒に考えます。